「延命したくないから胃ろうは勘弁!」と聞きますが胃ろうは延命のためだけに存在するわけではないんです。
口以外から水分や栄養を摂取する方法のことを「人工栄養法」といいます。
「人工栄養法」は、生きていくために必要な水分や栄養を取り込むために行われます。
食べ物を噛んで飲み込むための嚥下(えんげ)機能が筋力の衰えによって低下した人や、病気の影響で嚥下障害が起きてしまい、飲み物や食べ物をうまく摂取できない人などが対象です。
胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養のどれを選択するかは、状態によって異なるほか、それぞれのメリットとデメリットを考慮する必要があります。
ごはんが食べられなくなった時に栄養補給をする方法は4つの選択肢があります。種類と方法を具体的に説明します
①経鼻胃管栄養 鼻から胃の中にチューブを入れて栄養剤を注入する方法 ②胃ろう ③経静脈栄養 血管に直接栄養成分を注入する方法 ④何もしない 枯れるように亡くなります
お腹に小さな穴を開けて胃の中にチューブ(胃ろうカテーテル)を通して栄養剤を注入する方法
1.末梢静脈栄養法
2.中心静脈栄養法
ではここで、上記ひとつひとつのメリット&デメリットを考えます。
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1経鼻胃管栄養 鼻から胃の中にチューブを入れて栄養剤を注入する方法
【メリット】
◎誤嚥などの危険性がなくなり、消化器官の働きを維持できる
◎手術の必要がなく、看護師でも医者でもすぐに挿入可能
◎胃の内容物を吸引、または胃洗浄などほかの用途にも使える
【デメリット】
◎約2週間に1回チューブの入れ替えがある。
鼻の穴から食道や胃にチューブを通すとき、「ごっくん」「ごっくん」と管を飲み込まなくてはならず、
嘔吐反射が強い方はきつい処置である
◎鼻から管がブラブラしていて邪魔。トイレ歩行や散歩に出にくい。
誤ってひっかけて抜去する危険がある
◎容姿を気にされる方は、鼻に管が入ることが受け入れがたいこともある
◎嚥下訓練や水分摂取ができない
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2

【メリット】
◎誤嚥などの危険性がなくなり消化器官の働きを維持できる(経鼻胃管栄養と同じ)
◎鼻から胃にチューブを通す経鼻経管栄養よりも患者の負担が少ない
◎チューブが隠れているので、トイレ歩行や散歩に出やすい
◎カテーテルの接続部分は洋服で隠れるので、見た目には胃ろうがわからない
◎食道から胃にチューブが通っていないので、嚥下訓練をはじめることも可能
◎何も覆わず、お風呂に自由に入ることができる
【デメリット】
◎穴を開けるための手術が必要です。
チューブにより、1か月交換タイプと4〜6か月交換タイプがあります。
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3
1.末梢静脈栄養法 2.中心静脈栄養法
1.末梢静脈カテーテル
「末梢静脈」といわれる腕や足の静脈に、短いカテーテルを挿入して栄養を直接注入
する方法です。一般的な点滴です。たいていは腕にある静脈を使います。
【メリット】
◎消化管が機能していなくても、栄養を摂取することができる
◎カテーテルを装着する際に手術の必要がない。医者でも看護師でもできる
【デメリット】
◎カテーテルの針や栄養輸液の浸透圧などが影響して静脈が炎症を起こして痛くなる
ことがある。栄養輸液の注入時に血管痛が出たりすることがある
◎血管が細く脆い方だと、何回も点滴を入れ直し。針を何回も刺されて痛い
最終的に腕に入れられなくなると、手の甲とか足の甲とかそのほかそんなとこに点滴の針って入る!?というところに入れることになる
◎一日に投与できるカロリーの上限が1000kcal程度なので、大人が必要とする十分なエネルギー量が摂取できない。
2.中心静脈カテーテル
心臓の近くにある、太くて血流の速い静脈を中心静脈という。
一般的には鎖骨下を通る静脈から中心静脈にカテーテルを挿入する。
【メリット】
◎消化管が機能していなくても、栄養を摂取することができる
◎1日2500kcal程度までの栄養を投与できるので、末梢静脈栄養よりも多くのエネルギー量を摂取することが可
能。栄養状態が悪い場合にも適している
◎点滴漏れや血管障害が起こりにくい
◎抗ガン剤の注入もできる
【デメリット】
◎カテーテル挿入部から菌が入り込むと感染症にかかる
◎カテーテルの挿入に関連して、肺を傷つける「気胸」や、出血して胸に血がたまる
「血胸」などの合併症を起こしやすい
◎身体に対する負担は軽いものだが、手術が必要
◎医療処置が求められるため、施設によっては入所の受け入れが難しい場合もある
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4
枯れるように亡くなります
【メリット】 【デメリット】 そのまま死を迎える
例えば脳梗塞を起こされて、嚥下(飲み込み)が一時的に悪くなった方。
積極的に胃ろうを使い、嚥下訓練、リハビリをしたほうが良い場合もあります。
十分な栄養をつけて治療をすれば飲み込みがよくなるとことも。
治療としての胃ろうという選択をぜひ知っていただきたいです。
胃ろうがお断りの患者さんとご家族の意向があり、ずっと経鼻胃管栄養をしていた方がいました。
嘔吐反射が激しく、2週間に一度のチューブ交換で涙を流して、それはそれは辛そうでした。
胃ろうにしたほうが、嚥下訓練もできるし、交換の苦痛もないからご本人にとっては良かったのかもしれません。
イメージではなく、正しい知識を持つ必要があります。
自分が、親がどうしたいのか。
後悔のないように、大切な選択ができるようになる方が増えることを強く願っています。
文字にするとわかりにくいので、図と資料をお持ちして丁寧に説明しに伺います。
もし、ご希望があればお問合せくださいね。