【家族の気持ち】
「末期の状態だからこれ以上処置をするのはかわいそう」
「でもお母さんにはどんな状態でも生きていてほしいよ。死んでもいいの?」
「あきらめることになってしまうのかな」
【医療者の気持ち】
「病気になってから出会ったから元々どのような生き方をしていた方なのか想像がつかない」
「キーパーソンの娘さんにいつもお話をしているけれど、遠方に住む息子さんとは意見が異なるようだ。患者さん自身なら一体どう考えたのだろうか」
【家族】【医療者】
本当にこれがご本人の望んだ生き方だったかな?
認知症患者さん、脳梗塞などの患者さん、癌患者さん、その他急な事故や病気・・・自分で最期を判断することができない状況だったとき。話し合うことができない状態だったとき。あなたの最期はどのようなプロセスを経て決められると思いますか?
患者さんに意思(自己決定)能力がない場合の、人生の最終段階における代理判断のステップ
ステップ1 患者さんの事前指示書があれば、それを尊重します
ステップ2 事前指示がない場合には「そのような状態であれば、患者さん本人であれば、どのように考えただろうか」という本人意思を推定します
ステップ3 事前指示がなく、患者さん本人の意思の推定もできない場合、代理判断者(家族)が、本人の「最善の利益」に敵う判断をします
はじめにあげた「家族の気持ち」はステップ3の段階の葛藤をあらわしています。「家族の判断や医師だけでたりるのか」という論争がおこることもあります。
しかし、一番残念なのはステップ1の事前指示書作成の普及がまだまだ進んでいない現状です。
長い年月生きてきて「ここに行きたい」「あれが食べたい」「こういうのは好みじゃない」「あんなことがしたい」と皆、自分の主体的な決断をして生きてきました。それなのに、自分自身の終着点を誰かにゆだねていいのでしょうか。
いくら家族や大切な人だからといって、すべての考えや気持ちを共有できるわけではありません。

現在、市販のエンディングノートは自身の考えの方向性を示すことはできますが、「事前指示書」の作成とは異なることは理解しておく必要があります。エンディングノートは意味がないということではありません。ご本人の考えを気楽に残すことができ、一定の指針になります。
事前指示書は、意思決定能力があるあなた・ご家族・医療ケアチームが話し合った上で合意されなければなりません。
そして、関係者ではない証人の前で、意思能力のあるあなた自身で署名をする必要があります。
これにより実行力があり有用な指示書が作成できます。
事前指示書を自身で作成できるエンディングノートがAmazonで購入できます。
事前指示書を自分で作成したい方、また中身を知っておきたい方には非常におすすめです。
「私の四つのお願い」の書き方―医療のための事前指示書
一般的なエンディングノートでは延命や医療に対しての記述は
☑延命処置をしてほしい
☑延命よりも苦痛が少なくすることを重視してきめてほしい
☑回復の見込みがなければ延命処置はしないでほしい
といった内容ですが、「私の四つのお願い」は非常にふみこんだ内容になっています。
たとえばこのような具体的な説明があります。
延命治療は以下のものを含みます
人工呼吸器・人工的水分栄養補給・心肺蘇生術・大手術・輸血・人工透析・抗生剤投与などその他延命にかかわるものすべてです。
(助かる見込みのある「救命治療」は含みません)
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証人を立て署名・捺印をし、自身の判断を尊重するよう記した事前指示書をご自身で作成することもできます。
さて値段ですが一般のエンディングノートが1000円前後なのに対し、「私の四つのお願い」の書き方―医療のための事前指示書は2000円+税。うーーん、ちょと高いな・・・と思うかもしれませんがちょっと待ってください。
介護・医療機関で信頼性をもった提示をするには有効です。
医療のとっつきにくい説明も細かくわかりやすくされています。お値段に見合った内容です。
誰しもいつ自分がどうなるかはわかりません。
せっかく取り組むのですから、終末期を考えるというどんよりした暗いこととして向き合うのではもったいない。
ぜひ自分自身の生きざまを決定しよう、という前向きな気持ちで取り組んでみていただきたいです。