痰がゴロゴロしている・・・呼吸が苦しくて辛そう・・・。
確かにそうです。
でも、看護していると喀痰吸引されるのも辛そうで。
人生の最終段階で、実は切っても切り離せない喀痰吸引について考えてみたいと思います 。
1.喀痰吸引とは
喀痰(かくたん)とは唾液(つば)、鼻汁(はなみず)、狭い意味での喀痰(つまり肺・気管から排出される老廃物や小さな外気のゴミを含んだ粘液)の3つが含まれます。喀痰の吸引は、これらすべての分泌物である喀痰を吸引する行為を表しています。
写真のように口腔から吸引のパターン、鼻から吸引のパターン、気管切開をされていて喉から気管内に気管カニューレという器具を入れている場合は、気管カニューレから吸引します。
2.気管カニューレとは
気管切開カニューレは、呼吸困難を救う目的で気管とその上部の皮膚を切開して気管にカニューレを挿入することをいいます。
気管カニューレを入れていると勢いのある呼気や有効な咳ができにくく、喀痰は気管カニューレや気管支、肺内にとどまってしまいます。
喀痰が気道にたまって気道を狭窄し、窒息や呼吸困難をきたします。また気管カニューレ内は、つるつるしていて、人体の気管内のようにせん毛という喀痰を送り出すエレベーターのような機能がないため、喀痰が上がって来にくい状態にあります。
ですので、気管カニューレを挿入されている方は、喀痰吸引は生活に欠かせないものです。<人生の最終段階で医療者・介護者にしてほしくない処置>として選択できるものではありません。
3.嚥下・呼吸機能の二次的な低下
人生の最終段階に来ると、全身の運動機能とともに嚥下・呼吸機能も二次的に低下します。すると、食事後に食物残渣物が口腔内に残っていたり、喀痰がうまく呼気や咳などで強く押し出せません。
そうなると、上気道でゴロゴロ音がしたり、口の中で食物残渣と痰でうがいをしているような状態になることがよくあります。
そういったとき、吸引チューブで呼吸がしやすいように喀痰吸引をするわけです。
付き添いのご家族に吸引を頼まれることはよくあります。
呼吸が苦しそうでなんとか、少しでも、楽にしてあげたいという気持ちなのでしょう。
痰をひいて、ゴロゴロが取れるとご家族がホッとされる様子をたくさん見てきました。
なるべく苦しくないように。
そういった思いを強く感じました。
ポイント
吸引自体1回あたりの時間は15秒ほど。
ですが、小さなダイソン(掃除機)を喉に、鼻に挿入されているようなものです。刺激でゴホゴホ咳が出ます。
気管支より末梢の分泌物は、気管吸引では対処できないとされているため、自力で押し出してもらうことは吸引では重要なポイントとなります。
咳をしている状態の患者さんに「そうです、咳をしてくださいね」と励ましながら吸引します。
ここで一考。
小さなダイソン(掃除機)が口に、鼻に入るわけです。15秒間は息ができない状態となるのです。苦しいですよね。
特に鼻から喉に通す吸引は、鼻汁を吸引できるメリットはありますが、患者さんは不快感が強い反応です。
4.呼吸困難、酸素を取り込めない状態とは
痰が詰まって呼吸困難、経皮的酸素飽和度が下がる(酸素化できていないから呼吸をしていても苦しい)ことは看護師としてするべき処置と観察を怠っていることになります。
ですから受け持ち患者さんのの数値が下がった時などは、死に物狂いで吸引することもありました。
経皮的酸素飽和度を測定するモニターは、ただ指にはさむだけで、血液中にどの程度の酸素が含まれているかがわかる非常に便利な機械です。(下の写真)通常動脈血の採血をしないとわからないことが、指に挟むだけで何の痛みも伴わずにわかるのです。
動脈血を測定するため、どくん・どくんの血液の流れを測定できるため脈拍測定も可能です。
医療・介護現場で幅広く使われています。ちなみに値段はアマゾンで3889円(H28.10.31現在)
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5.まとめ~自分だったら人生の最終判断でどうしたいか~
医療者は大事な命を任されています。
痰の詰まりが亡くなる原因なんて許されません。
でも・・・。私は。自分だったら。
あと数か月の命なら、もう痰が詰まって亡くなってもいいなあと思うのです。
だって、苦しいことはひとつもしたくない。
有料老人ホームにて、患者さん家族の要請で「鼻からの吸引禁止」「苦しいから」と張り紙がしてある方がいらっしゃいました。
入れ替わり、立ち替わりいろいろな医療者が出入りしますから、全員に共有するにはとても有効な方法です。
両親の意向を確認して両親のときに、また自分も将来張り紙方式をやろう・・・と思いました。
自分がぎりぎり許せるのは、口腔内でうがいみたくゴロゴロしている喀痰だけの吸引。
鼻からの吸引は禁止。
深追いしない。
痰が詰まって亡くなっても構わない。
エンディングノートにある「延命処置をしないでください」って何を指しているんでしょう。
胃ろうや人工呼吸器だけが延命処置じゃないんです。
エンディングノートプランナーであり、看護師であるわたしにできること。
入院したとき、人生の最終段階を迎えたとき、そのときすでに認知症だった時。
ご本人とご家族が納得し、困らないよう具体的で実現可能な医療・介護の選択肢を提示していく役割を担っていきたい、そう思っています。