終末期医療の緩和ケアについてはエンディングノートに載ってたり、載ってなかったりの項目です。
しかし、ガンの痛みの緩和って、かなり終末期に大きなテーマとなるものです。
(ちなみにAmazon1番人気の「コクヨ エンディングノート」には残念ながら掲載されていません。)
よくある質問
ガンの痛みの緩和ケアはホスピスでするもの?
一般の病院でできるの?
自宅で最後を迎えたい人にもできる?
麻薬を使うと聞いたことがあるけれどなんだか怖い・・・
こんな疑問を考えていきたいと思います。
1.痛みの緩和の基礎
患者さんの痛みに対して、痛み止めの選択をする際、医師の好みとか製薬会社とつながっているところから・・・なんてイヤですね。きちんと基準があります。
WHO(世界保健機構)が示す3段階ラダーという基準です。
千葉市立海浜病院HPより
ぱっと見て、ちょっとわかりにくいですね。ちなみにこの表にオピオイド、とか非オピオイド、とかカタカナばっかり意味わからん!!となりそうですが、いいんです。いいんです。ひとまず、患者さんの痛みの状況に応じて3段階の鎮痛剤の選択がある、というイメージをつかんでください。1段階ずつ痛み止めが強くなっていきます。
ちなみに
オピオイドは医療用の麻薬性鎮痛薬の総称。痛みもない人が快楽で使うのは《ダメ。ゼッタイ。》
オピオイド
アヘンと同様、ケシから抽出した成分やその化合物から作る。モルヒネやフェンタニル、オキシコドンなどがあり、脊髄(せきずい)を通って大脳に届く痛みを遮断する。痛みのない人が使うと脳内に快楽物質が出て依存症になるため、通常は医師の処方が必要。2016年、歌手のプリンスさんがフェンタニルの過剰摂取で死亡した。
(2018-05-16 朝日新聞 朝刊 2外報)
ダメ。ゼッタイ。なのは痛みもないのに快楽物質を目的で使う過剰摂取です。医師の処方通り、痛みがある方が適正利用するのは問題ありませんので、そこは誤解されないようにしてください。
2.痛み緩和の第1段階
第1段階は、のどの痛みや歯痛や頭痛や月経痛、腰痛、膝の痛みなどなどあらゆる痛みに処方される一般的にもおなじみの鎮痛剤
「カロナール」(アセトアミノフェン)
「ロキソニン」「ボルタレン」(NSAIDs)
を使用します。これらは<非オピオイド鎮痛薬>です。つまり麻薬ではない。
これらで痛みが落ち着くようであれば、いきなりオピオイド=麻薬を使うことはありません。
少しご安心いただけましたか?段階を踏んで、痛み止めを強くしていくのです。
しかし、ガンが大きくなり痛みが増してくると<非オピオイド鎮痛薬>だけでは効かなくなってきます。こうなると第2段階に移ります。
3.痛み緩和の第2段階
<弱オピオイド>つまり弱い麻薬性鎮痛薬である「リン酸コデイン」を使うことが推奨されています。
リン酸コデインというお薬、聞いたことがある方もいるでしょう。これも普段処方されることのある薬です。
「ゴホゴホゴホッ、咳が止まらん!!」「咳のしすぎで苦しい」
こうしたひどい咳が何日も止まらず苦しいときに処方されます。咳中枢に直接作用するため咳症状への効果は高く、成人だけでなく子どもにも処方されることの多い薬です。咳をおさめるために処方されたリン酸コデインはうすーい濃度ですので用法・用量を守れば依存性は心配ありません。
第2段階、第3段階に移ったら、これまで使っていたロキソニンやカロナールなどの第1段階のお薬はどうする?
腎障害などがない限り、止めないでそのまま併用します。
4.痛み緩和の第3段階
第2段階のリン酸コデインでも効かなくなるといよいよ第3段階<強オピオイド>医療系麻薬を使います。モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンと呼ばれる薬です。
強オピオイドをはじめるときのご本人、ご家族の心配ごと。
寿命が短くなるのかな?
「麻薬中毒になってやめられなくなってしまうの?」
寿命は短くなりません。
麻薬中毒は非常にまれ。550例中1例(0.2%)程度。
がん疼痛で精神依存を生じる可能性は非常に低く、がん疼痛に対して精神依存になる懸念がオピオイドの使用を控える理由とはならない。 2010,日本緩和医療学会
患者さんやご家族の中には「麻薬は使いたくない」という方もいらっしゃいます。
しかし、ガン性疼痛の痛みは想像を絶するものです。
オピオイドを適正に使うことで、いままで痛みにに苦しみ起き上がることも難しかった患者さんが、短時間なら気分転換に外の空気を吸える、トイレにいくことができる、お風呂にはいることができるなど生活に広がりが出ます。痛みで話すことすら苦痛だった方が家族とお話がいままで通りにできたり、苦痛でいつもしかめていた顔つきがおだやかになります。
5.まとめ 冒頭のよくある質問の答え
ガンの痛みの緩和ケアはホスピスでするもの?
ホスピスは緩和ケアの専門ですので、痛みコントロールを含めた心身のケアを行うことができる施設です。
しかし、オピオイド(麻薬性鎮痛薬)の種類はいろいろあります。最近はますます種類が増え、1日1回飲めばすむもの、水液のもの、パッチで貼るだけ、舌下錠、座薬などなど。
ですから、一般の病院、看取りを行っている施設、自宅で最期を迎えたい方も緩和ケアは可能です。
麻薬を使うのはなんだか怖い・・・イメージにとらわれず、正しい知識を知った上で選択してください。痛みはコントロールできるものです。痛みのコントロールは、最期までじぶんらしく生きていくために、生活の質を高めるために重要です。