最近もの忘れが多い・・・
同じことを何回も聞く・・・
夕方になると「家に帰らなきゃ」と言い出て行こうとする・・・
こうした症状が出現したとき、まず、何からどうしたらいいのか、一体何科を受診したらいいのか迷う方が多いです。
また、本人にどう切り出したらいいのか、怒らせたり悲しませたりしないかと手をこまねいてしまうこともよくあります。
今回はどこを受診するのがいいのか、どのように声をかけたらいいのかを具体的にお話します。
1.受診する医療機関
大きく分けて4つパターンがあります。どのパターンでも大丈夫。ご本人が抵抗なく相談しやすいところにしましょう。
①かかりつけ医に相談 紹介状を書いてもらうパターン【1番スピーディ】
かかりつけ医が決まっていて、先生を信頼している場合はこのパターンがいいでしょう。
かかりつけ医に、もの忘れなどの現在の症状を相談し認知症の検査を受けたいと伝えましょう。ここでのポイントは「検査を受けたい」と伝えること。医師によっては、特に検査せず認知症の薬を出しておしまいの場合もあります。
検査結果によっては、改善可能な認知症の症状である可能性もあります。検査するための紹介状を書いてもらいましょう。
ではその先、紹介状を持ってどこの病院に受診するのがいいのか。これは「認知症疾患医療センター」がおすすめです。
認知症疾患医療センターとは、都道府県等が認知症の人とその家族の支援体制を構築するために、地域(東京都では島しょ部を除く区市町村)ごとに一箇所、認知症疾患における地域医療の拠点となる病院を指定するものです。
また、認知症疾患医療センターでは
(1)専門医療相談
(2)鑑別診断とそれに基づく初期対応
(3)身体合併症、行動・心理症状への対応
(4)地域連携の推進
(5)専門医療、地域連携を支える人材の育成
(6)情報発信、等
全国の認知症疾患医療センター一覧は<一般社団法人 認知症予防協会HP>から見ることが出来ます。
ここは、認知症に詳しい専門の医師が、専門の検査を行ってくれて、改善可能な症状なのか、他の病気ではないかをきちんと見てくれる病院です。
「もの忘れ外来」を設けている病院も多いです。
そしてほとんどの場合、予約制でかかりつけ医の紹介状が必要なので詳しくは病院に聞いてみましょう。
②かかりつけ医がいないけれど、認知症疾患医療センターを受診したい場合
認知症疾患医療センターに電話でかかりつけ医がいないけれど受診したい場合どうしたらいいか、と相談してみましょう。
③病院の検査を嫌がる場合 このパターンは大変多いです。すんなり受診してくれるなら苦労しないよ、と思いますよね。
本人居住地の地域包括支援センターにて、<もの忘れ相談会>などを設けていることがあります。
さらに「もの忘れ」という名前も受けつけない方もいるので、「健康相談」という形で受けてくれる場合もあります。
地域の医師が相談にのってくれる事業もあるので、現在あるもの忘れなどの症状に「受診が必要か」「受診は必要でないものか」をまず、こちらの相談会で見立ててもらうのもいいと思います。医師から紹介してもらうと、本人もすんなり納得して受診してくれることもあります(医者パワーは大きい)
そのほか、地域包括支援センターでは認知症カフェど気軽な相談できる場を紹介してもらうこともできます。
④まず地域のクリニックをかかりたいが何科をかかればいいのか知りたい
神経内科、脳神経内科にかかると良いです。また以下のサイトで認知症学会指定の専門医や日本老年精神医学会認定専門医を検索するのも良いと思います。
日本認知症学会 専門医を検索
認知症学会で指定された専門医。こちらのHPは「初診でも受け付けます」「紹介状が必要」など、病院の説明だけでなく、紹介が丁寧でわかりやすいですよ。
日本老年精神医学会認定 専門医を検索
老年精神医学についての優れた学識、高度な技能、倫理観を備えた臨床医を、 日本老年精神医学会専門医として認定。
2.受診を勧める声かけ
大事なことは希望のある声かけをすることです。大抵このパターンと逆の声かけ「最近もの忘れがすごく多いよ。ちゃんと先生に見てもらおう!」等言ってしまい、受診に遠のく事が多いです。
あなた自身に置き換えて考えてみましょう。
<悪い病気かもしれない。怖い・・・。>そう思っているときに治らない病気の診断をつけてもらおう、と家族に促されて受診する気力がわきますか?
ポイントは「病気の診断をつけてもらうことが目的ではない」ということ。
アルツハイマーですよ、レビー小体型認知症ですよ、など本人にとって知りたいのは診断名ではありません。そんことより「病院に行ったら何かいいことがあるのか」ということです。
認知症の検査を早めに受診する意義のひとつは、認知症状が起きている原因が他の疾患の可能性があるということ。
たとえば転倒をしたことで、硬膜下血腫があるかもしれない。この場合画像診断で判別でき、血腫を取り除くことで改善します。また、老年期うつなど心療内科の病気だったら、そちらの内服治療が必要ですし、血液検査で栄養障害がわかることもあります。現在の内服薬が原因なら、内服の変更で改善することもある、こうした治療できるかもしれない場合があることを伝え、その場合には絶対に早く検査を受けた方が良いと伝えます。また、改善可能なモノでなかった場合でも、認知症予備軍(俗に言うMCI)から真の認知症にならないために、運動や食生活、社会生活環境の改善で対応をしていくこともできます。
これからも、元気に、いまのように家で自立して過ごしていくためにも、検査を受けよう!と真摯に伝えましょう。
3.まとめ
認知症、もの忘れ・・・こうした言葉は本人の自尊心を大きく傷つけることは忘れず接していくことが大切。親しさゆえでも、ものわすれ等の症状を決してからかわないでください。そして、あきれた口調も本人には敏感に伝わります。
「認知症なんてプライドがゆるさない」「認知症なんて絶対言われたくない」そうおっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。
病院や介護保険の認定調査で「急にしっかり」返答される方も多いです。これを医療・福祉では「取り繕い反応」と呼びます。アルツハイマーの典型的な症状とも言われます。しかし、私は「取り繕い」との言い方を好みません。ご本人が「自尊心を保つために」あらわれている反応です。むしろ、こうした「急にしっかりする」残存機能と強みを大事にしていきたいです。
高齢だから仕方がない、とあきらめるのではなく、周囲が適切な働きかけをしていくことが大切です。