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大切な人を亡くした方への声かけ 善意の励ましでも傷つけることがある

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親の最期。いつかはこんな日が来るとはわかってはいても、大切な人との別れはつらく、悲しいもの。
それでも死後は葬儀や公的手続き、相続など四十九日ころまではバタバタと追われてしまい、悲しみに向き合う時間もありません。
死後の手続き自体は煩雑であるものの、ひとつひとつこなしていけばなんとかなります。
しかし、悲しみの心はどうでしょう。
大切な人との別れに心が追いついていかないこともあります。

ishiko
友人、知人、職場の同僚。大切な方との別れを経験した方にどのように声をかけたらいいのか迷うことはありませんか。人間対人間の声かけにマニュアルや正解はありませんが、どんな声かけが適切なのかを考えることはできます。

1.周囲の人からかけられた言葉で遺族がどれだけ傷ついているか

埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科の石田真弓講師のがん患者遺族630人への調査によると、
最も多く経験されているのは「時間が解決してくれる」という言葉をかけられた経験。

周囲の方も、なんとか励まそうと、言葉を紡いだのでしょう。
しかし「時間が解決してくれる」という言葉は「時がたったら忘れてしまう」という意味にもとれます。悲しみの渦中では、大切な人との思い出や別れの悲しみを忘れてしまうことに強い抵抗があります。「解決ってなに」「亡くなった人を忘れずにずっと心にいてほしいのに」と感じてしまうものです。

とはいえ、声かけしてもらった方も<善意の声かけ>であることは理解しています。だからこそ、怒ることもできず、何も言うことができず、孤独を感じ、ただ自分の心が傷ついてしまうのです。

そのほかに、周囲の人からかけられた言葉で遺族がどれだけ傷ついているか、傷ついた体験をした遺族の割合の順に以下に並べていきます。

◆ガンになる前はどんな生活をしていたの? 59%
◆ガンはどんな経過だったの? 58%
◆寿命だったんだよ 56%
◆病気に気づかなかったの? 52%
◆あなたが長生きしなきゃね 50%
◆元気出して 50%
◆がん家系だったの? 44%
◆いつまでも悲しまないで 43%
◆つらいのはあなただけじゃない 36%
◆でも悪いことばかりじゃないでしょう 36%

2.遺族に嫌がられる言葉

1番嫌がられていたのは死別の良い側面を強調するような言葉かけ。
例えば「これであなたも自分の時間がとれるようになったじゃない」という言葉には言われた遺族の93%が助けにならなかったと感じている。

「わたしたちの生活の何がわかるの?」「死んで楽になった、という意味?死んでよかったとでも言いたいの?」と思わせてしまう言葉です。声をかけた方はなんとか前向きな言葉かけをしようとしたのでしょう。しかし経験上、誰かの声かけで簡単に人の心が前向きになることなどありません。どんなに有名な医師やカウンセラーであってもです。そんな簡単に人の心は元気づけられることはないのです。

元気づけている側がしゃべりすぎていないか、ここに気をつける必要があります。相手の反応はどうでしょうか。「ああ」「ええ」と気のない返事を繰り返していませんか。苦笑いを浮かべていませんか。
相手が望まない励ましは、不要のものです。

◆いつまでも悲しまないで 43%
◆つらいのはあなただけじゃない 36%
も同類です。相手が前向きになりたくないときに無理に前を向かせる必要はありません。
悲しいと思う悲嘆の気もちは正常な反応です。

以下は興味本位の質問です。
◆ガンになる前はどんな生活をしていたの? 59%
◆ガンはどんな経過だったの? 58%
◆がん家系だったの? 44%

これらのことを、よく遺族に気軽に聞けるなぁと思います。様々な経過をたどり、たくさんの葛藤と病状の波があったことを一言でまとめられるはずがありません。大体、これを聞いて「まあ、気の毒に」くらいしか言うことができないなら聞かないでほしい。そして周囲の人へ「ガンだったらしいよ」と話すタネとして聞くのはもっと遠慮してください。

また、よくかけがちな言葉として
◆寿命だったんだよ 56%
類似の言葉として「大往生でしたね」もあげられます。ねぎらいや労りの言葉のつもりでしょうが、平均寿命より長生きだろうが、大切な人を亡くした悲しみに線引きはありません。寿命だから仕方ない、と割り切れないこともあります。

励ましているつもりで責めている言葉としては
◆病気に気づかなかったの? 52%

患者さんが亡くなったとき、医療者から見たら「こんなに寄り添って、精一杯心を尽くしているご家族は当たりまえじゃない。患者さんはしあわせな方だな」と感じる安らかな死を迎えた方もいます。そんんあご家族ですら、様々な経緯を思い浮かべて、自責の念を持つことも珍しくありません。
むしろ、一生懸命看病された方ほど「昨夜、そういえばいつもと様子が違ったかもしれない」「先日食べさせたものが悪かった?」など、冷静に考えれば絶対に違うことですら、気に病んでしまうこともあります。
こうした自責の念を抱えがちな家族に、大人がかける言葉かけとして無神経極まりないと思います。

◆あなたが長生きしなきゃね 50%
関係ありません。
また、類似の言葉かけとしてお子さんを亡くした方へ「亡くなった子の分まで、兄弟をかわいがらなくちゃ」などという言葉があります。
自分は自分。誰かの分まで・・・は不可能です。

3.遺族が抱える悲しみの反応

病気で家族を亡くした人には、心身に多様な障害・症状が現れます。

悲嘆とは、死別者の中で、ゆれ動き、変換する心身の反応のことです。
日本人が感じる悲嘆は、欧米人とのそれとは若干異なり、おおよそ4つに分けれます。

思慕・・・故人や故人との出来事を、意識的・無意識的に思い出したり、ふと心に浮かんでくる反応。故人に言うともなく独り言をいう、故人と過ごした場所に訪れる、アルバムを繰り返し見入る、仏壇や墓碑に話しかけるなどがその現れです。

疎外感・・・死別経験を契機に周囲の態度が変わったと感じる感情。好奇の目で見られていると感じる、仲間と打ち解けられず「わかってもらえない」と孤独感を感じることです

うつ的な不調・・・死別に対する反応性の症状で、不安感や無力感などで生じる無関心、故人なしの生活や人生に意味を見出せず、無気力な様相を呈するなど、うつに似た症状。ただしうつと異なるのは、本人が発症の原因を認知しており、本人のアイデンティティに揺るぎがないという点です。

適応対処の努力・・・現実へ対処するため自己を奮い立たせようとする認知的反応で、行動を伴うもの。「~しなければ」と自身を鼓舞する、故人にならって何かしようとする、故人の分まで頑張ろうとするなどが、これにあたります。

死別者は1~3の「心的反応(喪失感情)」と4の「現実への対処(理性)」の間で揺れ動いています。
自治医科大学看護学部 教授、日本グリーフケア協会 宮林幸江会長解説より

悲しみの形が徐々に変化し、大切な人を思いながらも、新しい生活に目を向けることができる。それは傍目には気丈にふるまっていても、何でもないことのように感じているそぶりを見せていたとしても、ゆっくりと変化していくものなのです。

4.どう声をかけたらいいのか

ただ心配しているだけなのに。傷つけたくない。一体どんな言葉かけをしたらいいんだろう。
迷われている方。
それが正しいです。簡単に声かけできることではありません。

話したいタイミングがあれば、何でも聞きますと耳を傾けること、
職場の方なら、落ち着くまで仕事の負荷がかかりすぎないよう配慮すること(実際の配慮はどんな言葉かけより感謝されると思います)
なにより日本人は「ご愁傷様です」「お悔やみ申し上げます」という労りの言葉があります。
「このたびは突然のことで・・・」と言葉を濁しても気持ちは伝わります。

適応対処の努力で、踏ん張っている遺族の方もたくさんいます。「意外に元気そうね」なども軽率に言わないでほしいものです。

5.まとめ

病気で家族を亡くした人の8割以上が、死別を経験する過程で睡眠の不調を経験しているとの調査結果があります。「寝付きが悪い」「深く眠れない」「早く目が覚める」といった不調を約6割が感じており、その57%は「日常生活に支障がある」と回答。しかし、医療機関を受診した人は15%にとどまっているそうです。公益財団法人「日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団」(大阪市)による調査(2013)
私自身は、ご遺族の方へは「眠れていますか」「食べられていますか」とお尋ねすることはあります。
それは、こうした日常生活がままならない状況とは、抑うつ傾向が強く、ご本人の気持ちの持ちようではどうにもならない問題に発展しているからです。この場合は医療職として受診を勧めることもあります。
緩和ケア病棟では遺族外来を設けているところもあります。または心療内科を受診するのも良い方法です。

そこにどれだけ善意があったとしても、言葉はナイフになるもの。ぎりぎりのメンタルバランスの中にいるご家族ですから、声かけには配慮していきたいと考えています。

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