親のもの忘れがはじまった・・・
地域包括支援センター窓口での相談は家族からはじまることが多いです。何か違和感があることをいちはやく気づける存在です。
そこでよく質問を受けることは
「病院受診を勧めたが自分は認知症なんかじゃないと断られる。どうやって受診させたらいいか」
「認知症で独り暮らしなんてできないだろうから施設を探すか、引き取るかしないといけない。でも引っ越したくないと言うがどうしたらいいか」
認知症の確定診断をする意味は?認知症でもひとりで暮らしていけるの?
よくある疑問について考えていきたいと思います。
1.もの忘れがはじまった親を認知症専門外来に受診させるにはどうしたらいいか
「もの忘れがこんなにあったら認知症なんじゃないの。一度病院で検査受けてみなよ」
「何回も同じ話してるよ。もう病院で調べてもらったほうがいい」
このように声をかける方が圧倒的に多いです。
しかしこの声かけで「そうだね、心配だから受診してみよう」・・・と親が思うことはほぼありません。
なぜなら、本人がいちばんはじめに指摘される前から、いままでと違う日常に気づいているからです。でもまさか、自分が認知症なんて信じたくない!
そんなときに、ズバリ病院で診断され現実を突きつけられてしまうかもしれないなんて、怖いし知りたくないと拒否をしたくもなります。
また「もし、認知症だったとしても。その病名を知って自分はどうなるの。治る薬があるわけでもないし。」そう聞かれた場合、ご家族は答えられるでしょうか。
認知症早期発見、早期絶望なんて言われるのはこういったことでしょう。
家族が受診を勧める場合、そもそも認知症と診断されたことでどうしたいのか、を先に考えておく必要があります。「認知症」とお墨付きを得ることが受診の目的ではないはず。認知症で困っているのは誰でしょう。ご本人でしょうか、家族でしょうか。
また認知症ってどんなことを指しますか。「日時などのもの忘れ」「記憶が抜け落ちてすぐ忘れる」「早めに受診」くらいしか、実は知識がないかもしれません。
知識を得ることは認知症当事者の方のためだけではなく、あなた自身のためでもあります。よく知らないものは恐ろしく感じるもの。よく調べて見ると家族のための情報、認知症になった場合の生活の工夫もたくさん知ることができます。親子関係もそれぞれ、親の性格、子の性格もそれぞれ。受診させるための魔法の言葉は残念ながら存在しません。でも認知症の知識を得たあとには、受診への声かけの仕方が絶対に変わります。認知症の診断受けてどうするの?と詰め寄られても、答えが用意されていれば「とにかく!もの忘れがひどいんだ受診しなよ!」などと感情的になることも回避されるのではないでしょうか。
ココがポイント
認知症情報 検索の仕方
「認知症」と検索すればたくさんの情報が泉のように湧きあふれているけれど、情報収集は公的機関のHPを見ることをお勧めします。⇨厚生労働省 認知症施策
世の中は厚生労働省が打ち出した法令に基づいて動いています。このためこちらが最先端かつ正しい情報を得ることができるのです。
役所のお堅くて見づらいHPのイメージではなく、とても工夫していて見やすいページがたくさんあります。
おすすめは以下の4つ。
もしも 気になるようでしたらお読みください [PDF形式:1,064KB]
生活の中でなんとなく違和感を覚えている方やご家族に向けた、ヒントとなる情報をまとめた絵本のような冊子です。
認知症かそうでないかは実際には線引きはできません。
あなたの人生を自然に歩むことが大切です。
少しの工夫と助けを使って。
あなたが、病院に行くのは認知症の診断のためではありません。
自分らしく生きるためのヒントを見つけるためです。
本人は病院に行くことが怖いのです。決して拒否しているのではありません。
一番わかっているのは、本人です。
そのほか記憶を助けるもの、など盛りだくさんの情報ですが、挿絵がふんだんでとても読みやすい。
知識も得られて心も癒やされる、具体的な対処も考えられ本人にも家族にもおすすめです!
パソコンでは「DC-NET もしも認知症」でダウンロードすることができます。
認知症と向きあうあなたへ | 公益社団法人認知症の人と家族の会 (alzheimer.or.jp)「家族の会」では、認知症と診断されたご本人と家族へ伝えたいことをまとめたハンドブック「認知症と向きあうあなたへ」を作成しました。
上記リンクからPDFをダウンロードしてご覧いただけます。また、全国の「物忘れ外来」や「認知症疾患医療センター」などで無料で配布しています。
本人にとってのよりよい暮らしガイド (本人ガイド)[PDF形式:7,386KB]
認知症の診断を受けた本人が次の一歩を踏み出すことを後押しするような、本人に向けたガイドです。
くたびれやすく、病院で診てもらおうと思っていったら、色々検査をされて、結果は「認知症」。医師にいわれて、「えー、嘘!」と信じられませんでした。
でも、どこかほっとしました。病気のせいだったんだと、ようやく理由がわかって、なんかすっきりしました。
今から振り返ると、スタートラインに早く立ててよかった。
病院にいくのは、ちょっと怖いけど、迷ってないで、
ちょっと勇気を出して、早く行った方がいい。
一日も早く、スタートを切ろう
暗いトンネル(落ち込み)から一日も早く脱出しよう
トンネルを抜けると、可能性が広がる
認知症介護情報ネットワーク
認知症とは? 認知症の種類と原因は? 認知症がどのような病気で、認知症の方にはどう接するのがよいのか。認知症を正しく理解いただくために、認知症の人の立場に立ち、そのうえで認知症の人のその人らしい暮らしを実現するための基礎的な知識をご紹介しています。
そこで、シリーズを始めるにあたって、私たちは、いったい、どうしてボケたくはないと思うのかを考えて見ましょう。
パーソン・センタード・ケアの項目より
こうした本音の話のほうが読む気になります。困っている時にきれい事なんか聞きたくないですよね。
動画で知りたい方は、動画で学ぶ認知症「知ってなるほど塾」もあります。
「事例」をもとに内容を理解するという構成になっています。
2.認知症で独り暮らしなんてできないだろうから施設を探すか、引き取らないと!という悩み
認知症とは
脳の機能は、記憶、見当識、言語、認識、計算、思考、意欲、判断力など多様です。認知症ではこれらの脳の機能(認知機能)が持続的に障害され、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を指します。
国立精神・神経医療研究センター 認知症センターより
もの忘れがあるけれど、3食食べて、季節に合って服を着て、友人とお茶して、体操もして・・・金銭管理だけこの間引き落としできなかったみたい。
この場合は、じゅうぶん日常生活、社会生活を送れています。
約束を忘れないようカレンダーに書く、まいにち新聞で日にちを確認する、時計を日付入り時計に変えるなどの工夫と金銭管理を手伝うことで充分ひとり暮らしは可能です。着替え忘れる、家事は行き届かなくなった、という場合は介護保険でヘルパーさんをお願いして時折見守りしてもらう方法もあります。お薬の管理も薬剤師の訪問薬剤指導(居宅療養管理指導)を受ければ、お薬カレンダーへセットして自宅に届けてくれたり、残薬の管理もしてくれます。
3.おわりに
施設か、引き取るか!とお子さんが慌てているとき、ご本人の意思が入っていることがほとんどありません。親御さんはたくさんの困難をくぐり抜けて生きてきました。これまでに培った自分なりの価値観とプライドを持っています。まず、話を聞いてください。
「もの忘れあるようだけど生活で困っていることある?」一緒に作戦を立てましょう。
今後もここで暮らしたい?私と、俺と暮らしたい?施設も考える?
率直に聞いてみましょう。
本人が納得する形を選ぶことが大切です。
また転居に関するリスクも考える必要があります。脳の土台が揺らいでいる認知症の方は環境が大きく変わることで症状を不安定にすることが多いです。
そして子どものもとに引き取ったとして、親御さんの生活まるごと、地元で過ごしていたように、お友達のように過ごすことができますか。
ほとんどの子ども達は自分の生活が忙しいですよね。
親御さんがその土地に築いた慣れ親しんだ散歩道やスーパー、お友達関係は一緒に引っ越すことができません、そのあたりの寂しさにも充分考慮するる必要があります。
認知症でも独り暮らしのひとはいる?⇨はい。
認知症でも意思は示せる?⇨はい。
施設や子どもが引き取ることがしあわせにつながることももちろんあります。
正解はありません、その方が望む形がいちばんです。
「老乱」は息子夫婦が進みゆく認知症に焦って、様々な脳トレを課していく様子などよくある風景か描かれています、その先にあるものは何か。どうすればよかった?そんなことが赤裸々に書かれた本。認知症家族、携わる福祉や医療職、これからを担う若者みんなに読んで欲しい本です。
他の話も読んでみる⇨それいけ!地域包括支援センター【case15】最後の晩餐
人気記事⇨介護についての決定事項は誰に頼みたいか~エンディングノートの重要項目