地域包括支援センターの仕事で受け持っていた独居の88歳男性 Nさん。
長く独居の生活のため「自分のことは自分でやる」という自立心の高い方だった。何を聞いても「大丈夫、大丈夫」といい弱音ははかない。
骨折して手術、退院時にやむをえず(本人はしぶしぶ)手すりと杖を導入するため介護保険を申請したことで、要支援認定。
予防プラン作成のため私がケアマネージャーとして関わることになりました。
頸椎や腰部の痛みもあるので、かがんだ体制がきつく湿布を欠かせないので、ヘルパー導入を提案したが「自分のことは自分でやる」ときっぱり。
何でも人任せでない、その自立心と自負が88歳になっても凜とした独居の暮らしを支えているのだな、と思いました。
このため、「提案はする、情報提供もするが、Nさんの自立心をじゃましない関わりをする」と考えていました。
ある日、訪問すると6か月前の日付の処方薬がテーブルに置いてあります。
他の内服とはあきらかに違うため、見せていただいたところ処方袋の中には、胃薬が入っていました。
「胃が痛みますか?」と聞いたところ、「胃は大丈夫大丈夫。そうじゃなくて便秘になりやすいから便秘のときに飲んでいるんだ」と。
便秘のときに胃薬を飲んでいたのか・・・!!
そこはあえて指摘せず、便秘はいつから続いているのか、痛みや出血はないか、出る便は固く肛門を傷つけるものではないか等を確認。
すると「いつも固くて出ないから指でかきだしてる。大丈夫大丈夫」と。
なんと、自力で!自己摘便されていました。傷つくことも心配だし、なによりそんな日々は辛いでしょう。
患者さんの大丈夫、大丈夫は「どう大丈夫なのか、大丈夫にしている本人なりの工夫やこだわり」をきちんと確認しないといけないな、と痛感しました。
ご本人の承諾を得て、主治医に自己摘便について知らせ、内服薬で排便コントロールをしていただけるよう相談しました。
整腸剤、便秘薬の処方が始まり、徐々に排便コントロールがついていきました。
こういった生活については、病院では本人の訴えがない限り見えない部分です。
本人が苦痛な生活を当たり前にしてしまわないようケアマネとして生活を丁寧に聞いていく必要性を実感しました。
先日受けた研修で講師の方が「支援する人は優れたインタビュアーであれ」と言っていましたが本当にその通りですね。
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